「セキュリティ」と聞くと、とかく難解で専門的な世界だと思いがちだ。しかし実は、セキュリティの成り立ちや常識の中には、誰かに話したくなるような“意外な真実”がたくさん隠れている。中小企業の経営者や管理職にとって、セキュリティ対策は無視できない経営課題である一方で、理解のハードルが高く感じられ、どこから手をつければいいか悩むケースも多い。本稿では、「へぇ〜」と思わずうなずいてしまう5つのセキュリティ雑学を紹介しつつ、経営に活かせるヒントを添えていく。セキュリティを人間的な営みとして捉え直す視点は、堅苦しい対策よりもずっと有効かもしれない。
ハッカーは「悪人」ではなく「問題解決の天才」だった
「ハッカー=悪い人」というイメージは、実はメディアによる誤用が原因である。元来、ハッカーとはマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生たちが、模型鉄道の自動制御装置を改良する際に使い出した言葉で、「仕組みを創造的に改造する技術者」を意味していた。つまり本質的には“クラフター”や“職人”に近い。悪意ある攻撃を仕掛ける人物は、本来「クラッカー」と呼ぶべき存在であり、区別されるべきものなのだ。

社内にも“ハッカー思考”を育てる視点を持つ
“問題解決思考”は、社内の業務改善にも通じるスキルである。従業員の中に潜む「ハッカー気質」に着目し、マニュアル外の工夫や改善提案を歓迎する文化を育てることで、セキュリティだけでなく業務全体の強化につながるだろう。ルールを破る人ではなく、ルールの内側から創意工夫を発揮できる人材こそ、中小企業の未来を支えるキーパーソンとなる。
ウイルスは最初“無害なアイデア”だった
コンピュータウイルスという概念は、1983年に学生のフレッド・コーエンによって提唱された「自己増殖プログラム」が起源だ。当初は学術的関心に基づくもので、悪意は含まれていなかった。ところが、「面白い」と感じた一部の人間が悪用し、1986年には実害をもたらすウイルス“Brain”が登場した。しかもその目的は、パキスタン人の兄弟が海賊版ソフトの拡散を防ぐために作ったという意外な理由だった。

技術の使い方こそが経営判断の本質
ITそのものには善悪の概念は存在しない。重要なのは、それをどう使うか。生成AIやクラウドサービスも同様であり、経営者が「面白そう」だけで導入してしまうと、使いこなせずに無駄な投資になるケースが多い。「IT顧問のススメ」にもあるように、“買う前に運用”を考える姿勢が経営判断として求められている。
パスワードは“複雑”より“長い”が今の常識
かつては「8文字以上で記号を混ぜること」がパスワード強化の常識とされていたが、2017年にアメリカのNIST(米国国立標準技術研究所)が推奨方針を転換した。現在では「覚えやすく、長いパスフレーズ」が主流であり、定期的な変更すら推奨されていない。背景には、“人間のミス”こそが最大のセキュリティリスクであるという認識がある。
人間の弱さを前提にセキュリティを設計する
「人は忘れる」「人は面倒くさがる」という性質を前提にセキュリティを考える必要がある。ツールより“仕組み”で守る。SSO(シングルサインオン)やパスワード管理ツールの導入は、社員教育よりも有効な対策だ。IPAが推奨する5か条でも、パスワード管理は初歩的かつ重要な対策として位置づけられている。
HTTPSの“S”は「Secure」の“S」ではない?
HTTPSの“S”は“Secure”と説明されることが多いが、厳密には“SSL/TLSという暗号化プロトコルを使っている”という意味である。つまり、Sは「セキュアな何か」を意味しているわけではなく、技術的な仕組みを表す記号にすぎない。よって、「鍵マークがあるから安心」は大きな誤解であり、詐欺サイトでもHTTPS接続は可能である。
「見た目の安心」ではなく「実在性の確認」を重視せよ
HTTPSや鍵マークは通信が暗号化されている証拠であって、相手が信頼できるかどうかの保証にはならない。フィッシング詐欺サイトも普通にhttps接続してくる時代だ。「誰と通信しているか」=実在性の検証(ドメイン・会社名・発信元)を確認するプロセスを徹底することが、経営上のリスクを避ける唯一の手段である。
世界初のランサムウェアは“郵送”で配られた
ランサムウェアというとネット経由で拡散する現代的な攻撃を思い浮かべがちだが、最初の事例は1989年の“AIDS Trojan”であり、フロッピーディスクに仕込まれたプログラムが郵送されたものだった。感染後は「ライセンス料を支払え」と表示され、支払い先はパナマの私書箱。現在のランサムウェアの“金銭要求モデル”は、すでにこの時点で確立されていたと言える。

セキュリティ対策は「技術」より「人の心理」から考える
ランサムウェアの本質は「脅し」だ。どんなに仕組みが進化しても、最終的にお金を払わせるのは人間の心理を突く手口である。「情報漏洩が怖い」「業務停止が困る」という恐怖に付け込む。中小企業こそ、「攻撃される側の感情」に焦点を当てたセキュリティ教育が必要なのだ。
まとめ:セキュリティの常識は“知れば面白い”
セキュリティは技術の問題であると同時に、人間の行動と心理が絡み合う“文化”でもある。ハッカーやウイルスの誕生秘話、パスワードの常識、HTTPSの真相など、知ることで視点が変わり、対策の優先順位にも納得が生まれる。
中小企業の経営者にとって、最も大切なのは“人と仕組み”をどうデザインするかだ。ツールを買う前に、まずは「へぇ〜」と思える情報を一つでも多く知ること。それが、結果として最も有効なリスク管理への第一歩になる。
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