「RPAはもう古い」は大間違い:中小企業こそAIとRPAを併用せよ【RPA導入の失敗を避ける方法】

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「RPAはもう古い、これからはAIの時代」──そんな言説が一部の報道やベンダーの間でささやかれている。しかしこの認識は本質を見誤っている。中小企業においては、RPAとAIは競合するものではなく、それぞれの特性を理解し、適材適所で使い分けるべき存在だ。

むしろ、これを正しく活用することがIT人材不足を補い、低コストで業務効率化を実現するカギとなる。本稿では、RPAとAIの違いと補完関係、導入失敗を回避するための実践的なアプローチについて詳述する。中小企業の経営者にこそ知ってほしい、IT導入の適切な視点を解説する。

RPAとAIは、そもそも得意とする業務領域が異なる。誤った理解が、無駄なIT投資や導入失敗を招く。

RPAは「繰り返し」「定型作業」の自動化に特化

RPA(Robotic Process Automation)は、シンプルに言えば人間がPCで行っている定型業務を自動化するツールである。特定の順序で毎回同じ作業を実施する業務──例えば、請求書データの入力、定型フォーマットでのメール送信、在庫の照会・報告など──に最適だ。

RPAは判断しない。疲れない。感情も波もない。ただただ正確に繰り返す。それゆえ、人手による作業では避けられない「ヒューマンエラー」を排除できる。つまり、人間がミスしがちな「つまらないが重要な作業」を正確に代行してくれる存在といえる。

AIは「複雑」「判断を要する」処理に強みを持つ

AIは、膨大なデータからパターンを学習し、人間が判断に迷うような業務を支援する。例えば、顧客の問い合わせ内容から意図を読み取って自動返信を組み立てる、売上データから次月の在庫予測をする、業務プロセスを可視化してボトルネックを特定するなど、業務の高度化に貢献する。

AIは「考えるが動かない」、RPAは「考えないが動く」──この補完関係を理解せず、AIだけ、またはRPAだけに期待するのは危険である。

「RPAは古い」は誤解。むしろ今こそ活用するタイミング

AI時代においても、単純作業はなくならない。人手による手作業が多く残る中小企業では、むしろ今こそRPAの導入メリットは大きい。経営資源が限られた中で、AIとRPAの機能を適切に使い分けることで、業務効率化と省人化を同時に実現できる。

RPAを導入したが思ったように活用できなかったという失敗事例は少なくない。その要因と対策を解説する。

「RPAを導入すれば自動化できる」という誤認識

多くの企業がRPAを魔法のように捉え、「導入すれば業務が楽になる」と誤解している。だが、RPAは「定型作業しかできない」という限界がある。

業務が属人化していたり、判断を要する工程が混在していたりすれば、RPAは導入しても使いこなせない。その結果、放置されたままのRPAが残ることになる。まずは「RPAが得意な作業領域は何か?」を把握することから始めるべきだ。

業務プロセスの整理をせずに導入してしまう

そもそも業務の流れが整理されていなければ、どこにRPAを適用するべきか判断できない。業務フローが属人的・非定型なままで、RPAの投入ポイントが不明確なケースが多い。これは「DXはまだ早い?まずは業務フローの整理整頓からスタートしよう」でも指摘された共通の問題点である。

ITベンダーの提案を鵜呑みにしてしまう

RPAの導入がベンダー主導で進められた結果、「提案されたツールを導入したが業務に合っていなかった」というケースはよく耳にする失敗例だ。

ベンダーの提案は売上重視で、自社の業務特性を十分に理解していない場合が多い。これを防ぐには、IT顧問やセカンドオピニオン的な第三者の視点を入れることが極めて重要である。

単独で使うのではなく、AIとRPAを連携させることで、中小企業のIT課題に対してより効果的な解決策が実現できる。

AIで業務分析、RPAで定型化

AIを活用して、問い合わせメールやチャット内容を分類・学習させる。そして、分類された内容に基づいてRPAが定型返信を自動で行う。こうした組み合わせは、単なる自動化ではなく「対応品質の向上+人件費削減」という効果を生む。AIを専門家、RPAをオペレーターとして位置付ける運用が有効だ。

「AIが判断し、RPAが実行する」という分業体制

業務の中には、都度の判断が必要なものと、実行さえされれば良いものが混在する。ここでAIが判断プロセスを担い、その指示をRPAが忠実に実行するという体制を構築すれば、高度な業務も安定的に運用できる。これにより、IT部門が存在しない企業でも高度な業務運用が可能になる。

IT初心者の味方としての「AI知識ベース」活用

ITに不慣れな経営者にとって、AIは知識ベースとなる助言者として機能する。RPAツールの選定や運用に関しても、AIを通じたシミュレーションや評価が可能であり、ITベンダーに依存せずに合理的な意思決定ができる。ここに「AIを味方につける」メリットがある。

AIとRPAは決して競合する技術ではない。それぞれの特性を理解し、連携させることで、中小企業でも低コストかつ高効率なIT活用が可能になる。RPAに単純作業を任せ、AIには判断や分析を担当させる──この分業と補完関係が成功のカギだ。

導入にあたっては業務フローの見直しを行い、自社の課題を明確にすること。そして、IT顧問や専門家のセカンドオピニオンを得ることで、失敗リスクを回避できる。IT人材不足という課題を前提とした場合、このような外部知見の活用こそが経営者の最善策である。RPAは古くない。むしろ、今こそ活用すべきテクノロジーだ。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
また、お会いしましょ。