【IT人材不足の解消】中小企業における実効性の高い対策

Issue

IT人材が不足している。経済産業省は2030年には約79万人のIT人材が不足すると試算している。こう言われてもボリュームというかスケール感が大きすぎてピンとこない。ITの専門性は多岐に渡るので、カテゴリー別や全般的な知識を求められているのかによっては、IT人材の位置付けそのものも変わってくる。中小企業においてもIT人材が不足しているとよく言われる。ホントに人材不足が問題なのか?それを補う効果的な手段があるのか?IT化の悩みや不安はどのように解消していけば良いのか。IT人材の要否という観点から解説する。

POINT

✅ IT人材が採用できない3つの理由
✅ 中小企業の経営者が求めるべき「IT人材」とは?

IT人材不足を採用で補うことができるか?その答えは「ノー」だ。絶対不可であると断言はできないが、採用することで不足を補うということは推奨できない。採用が人材不足解消の対策とはならないのだ。それには以下の3つの理由がある。

理由❶:ITの仕事に従事したい人はITベンダーに職を求める

ITが好きで知見を深めたいと考えている人は、中小企業でIT担当になろうと職を求めることはないだろう。新しいものに触れる機会がほとんどないからだ。システムの新規導入時は、その機会かもしれないが頻繁に何か導入することはない。導入したものをメンテナンスする仕事は存在するが、それが知見を深めることに繋がるかと言えば、経験値にはなるが、深まることにはならない。

ITベンダーに従事すれば、複数の顧客対応で多くを経験できるため、そこに職を求めることは自明の理である。ITに精通した若手社員を採用できる可能性は限りなくゼロに近い。IT業界で経験を重ねた50歳代くらいの人であれば、セカンドキャリアとして中小企業のITを支援する仕事に就きたいと考える方はいるかもしれない。個人的なつきあいの範囲だが、何人かは知っている。中小企業で長く経営の立場にいた筆者の感覚としては、その選択肢をとることも、(理由についてはここでは割愛させてもらうが)あまりオススメはできない。

理由❷:中小企業のIT担当者は孤立する

IT担当の孤立…これは容易に想像がつくだろう。不足しているところに1名の採用。同じ仕事をする人はいない。ITについて聞ける上司も先輩もいない。自分が休めば、代わりにやってくれる人もいない。普通に稼働していて当たり前と思われているITインフラが、何らかの理由で停止した場合「どうなってんだ?お前、IT担当だろ!なんとかしろ!」と、叱責とは言わないが、詰め寄られることがあったとしても、褒められたり、日常の業務を労ってくれる人もいないだろう。

中小企業は個々に自分の業務に追われている感があるので、IT担当者を気にかけている余裕なんてないのだ。せっかく採用したIT担当者は孤立に耐えられなくなり、辞めていくことになるだろう。多少、極端な表現をしているがITの業務に限らず、このような構図は中小企業では決して珍しいことではないであろう。

理由❸:IT担当者を受け入れる体制も環境も未整備

IT担当者を評価する仕組み(人事考課制度など)がないのに採用していいのだろうか?営業職や自社の事業に役立つ技術職なら、成果や技能に対して給与を支払うことになり、大きな成果やできることの範囲が広がってくるなどしたら昇給や、昇格もあり、キャリアプランを描くことはできるだろう。

※もともと、IT担当者が存在しないのであれば、その業務を評価する制度も存在しないであろうことを前提とした見解です。

コアコンピタンスを生み出すことのないIT業務は、何を持って評価され、昇給…昇格があるのか。そもそも複数人のチームで運営されることもないであろうから、部下をもってマネジメント経験を積むこともできない。さらに付け加えると、中小企業のIT業務は、時に多忙を極めることはあるが、過渡期を過ぎると、忙しいというほどやることもなくなってしまう。そうなると、何らかの業務との兼務となり、思っていたことと違う。そういうことをしたかったんじゃない。このままここにいても…と、なり、辞めてしまうことになる。

募集をしても、応募は限りなくゼロであろうし、採用できたとしても早期に退職されることになるであろう。それが採用による人材不足解消をオススメしない理由である。

IT業務を担う人がいないから、適切なIT環境の構築や運用ができないと考えるのではなく、何をするべきで、IT化に何を求め、何を回避し、どうしたいのか本質的に考えてみましょう。

IT人材を求める理由

IT人材が不足しているというからには、その理由があるはずだ。なぜ不足していると認識するのか?人が充足しているかどうかの前に、ITに関しては以下が重要な視点となるのではないか。

人材不足よりも重要な視点

無駄なIT投資は避けたい(失敗したくない)
✅ 自社に合ったものを使いたい(導入したい)

大きくはこの2つが実現できていたらいいのではないか。だとするならば、IT人材が必要なのだろうか?ここで求められるIT人材とは、ITの何の知識・技術を有していると良いのだろうか?

中小企業に必要な「IT人材」の知識

中小企業の経営者が求めるIT人材というか、ITに関して求めるものは以下の3つではないのか。この知識をベースに導入の可否や製品の選定をした根拠など、納得できる報告を受けることができれば安心してIT投資に踏み切れるのではないのか。停止したPCの復旧や、ソフトのインストール、機器の設定をする人材を必要としているわけではないだろう。

IT人材に求める知識・知見

・製品やサービスの幅広い知識
・必要な要件から、価格の妥当性を判断できる経験と知識
・選択や判断に合理的な根拠を説明できる技術知識

手を動かす人材は確かに必要だが、自社に社員として抱えておかなくても必要な時に依頼することで対応してくれる事業者はいくらでも存在する。都度、費用がかかったとしても、採用、教育、給与…等々(社員を抱える)の経費と比較すると低コストであることは明らかだろう。

世間で一般的に言われている「IT人材」と中小企業の経営者が求める「IT人材」は似て非なるものなのだ。この問題の根本に言及し、どのような対策を講じるべきかについては、拙著にまとめているので是非、ご一読いただきたい。

「IT顧問のススメ」是非、ご一読ください。
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最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また、お会いしましょ。