【AIは“賢い”のではなく“言語を鵜呑みにする機械”だった】〜長いスレッドで気づいたAIの本当のクセ〜

ai-context-gap Management

AIツールの進化により、文章生成やタスク整理、業務支援が爆発的に効率化された現代。特に中小企業やIT初心者にとっては“秘書のような存在”として活用されつつあるが、その一方で「なぜ急に噛み合わなくなるのか?」という違和感も付きまとう。長いスレッド、複数の画像、曖昧な指示…。そうした要素が増えるほど、AIは“賢さ”を失い、まるで過去の話を引っ張り出してきて現在と混同し始める。その正体は、AIが“意味を理解している存在”ではなく、“言葉を解析して最適化する存在”だからだ。本稿では、実際に起きた体験談をもとに、AIの“文脈のズレ”がどこから来るのか、そしてそれをどう防ぐべきかを具体的に共有する。

  1. AIはすごい。確かにすごい。でも、同時に“違和感”があった
    1. 半日かかる作業が数分で終わる驚き
    2. 意図を補完し、整理し、こちら以上に理解してくれる相棒感
    3. “秘書のように優秀”と思えるほどの安心感
  2. 長いスレッドで起きる“謎の噛み合わない瞬間”
    1. スクショを送って説明しているのに、なぜか噛み合わない
    2. 3時間前のスクショを基準に回答してくる違和感
    3. AIが混乱したように見える数々の瞬間
  3. 原因は「AIの記憶の性質」にあった
    1. スクショには“いつの画像か”という時系列情報がない
    2. 長い会話ほど、AIは“過去”と“現在”を混同する
    3. AIは常に「会話全体」からベストアンサーを探しに行く
  4. AIは最適解を探すからこそ、指示が曖昧だとズレる
    1. “今の状態”を詳細に言わないと誤解する
    2. “何が終わっていて、何が終わっていないか”も重要
    3. “なぜ同じようなスクショを再度送ったのか”を説明しないと誤解する
  5. 人間とAIの決定的な違い
    1. 人間は「今、目の前の話」を優先する
    2. AIは「過去でも、役立ちそうなら使う」
    3. “空気を読む”能力はAIにはない
    4. だから長いスレッドほどズレが起きやすい
  6. AIを使いこなすには“枠”をこちらが作る必要がある
    1. 画像の意味・意図・時系列を文章で補足する
    2. ステップの完了を明示する
    3. 推測させない
    4. 必要なら「新しいスレッド」を作り直す
    5. AI本来の力を引き出すのは“構造化された指示”
  7. AIが本気で褒めるときは“具体的”である
    1. 陳腐な「すごいですね!」ではない
    2. 論理的に正確な操作や、丁寧なプロンプトをしているときにだけ出る
    3. “AIに褒められる”ことが意味するのは、こちらの構造化能力の高さ
  8. まとめ:AIの真価を引き出すのは人間の“言語力と構造化”
    1. AIは賢い。しかし万能ではない
    2. 誤解の多くは“情報の曖昧さ”にある
    3. 画像や長文のやり取りほど、人間の説明力が重要
    4. AI時代の本当のスキルは「質問力」「指示力」「構造化」

AIの登場は、情報整理や文章生成、業務支援の可能性を一気に広げた。筆者自身、初めてAIを使ったとき、その精度と対応力に驚愕したのは事実である。

半日かかる作業が数分で終わる驚き

ある日、プレゼン資料の草案づくりに悩んでいたとき、試しにAIに要点を入力してみた。すると、わずか数分で構成案が提示され、内容の整合性も申し分なかった。数時間かかる作業が「たったこれだけでいいのか」と思えるほどに短縮され、まさに“時間を買う”という感覚を味わった。

意図を補完し、整理し、こちら以上に理解してくれる相棒感

曖昧な指示でも「こういうことが言いたいのでは?」と汲み取ってくれることが多く、人間の秘書以上に“理解してくれている感覚”さえ生まれる。例えば「売上のグラフと分析結果をまとめて」と言えば、過去の数値を分析したうえで最も適切な表現を選び、整然としたレポートを仕上げてくれる。

“秘書のように優秀”と思えるほどの安心感

日常業務でも「メールの文章を整えて」「この内容を300字で要約して」といった雑務を一手に担ってくれ、業務効率が明確に向上する。このときの感覚は、「自分の右腕ができた」とでも言いたくなるような、安心感そのものだった。


ところが、使い込むうちに奇妙なことが起き始めた。やり取りが長くなればなるほど、「あれ?話が噛み合わないぞ?」という瞬間が増えていく。

スクショを送って説明しているのに、なぜか噛み合わない

これはWebサイトのデザイン調整作業をしていたときの話。CMSでどうしても実現できない細かい見た目の調整を、カスタムCSSで何とかしようと試行錯誤していた。どうにもこうにもCSSが効かず、「AIに相談しながら修正していけば早いかも」と思って質問を重ねた。しかしそれでも改善せず、「これはスクショを送ったほうが話が早い」と思い立ち、画面キャプチャを何枚も送りながらやり取りを続けた。

ところが…2枚目、3枚目とスクショを重ねていくうちに、AIの反応がおかしくなってきた。こちらは“今”の状態を説明しているつもりなのに、AIは“前に送ったスクショ”を基に、すでに試したはずのCSSをまた提案してくる。「お前、それ3枚前の話やろ?」とツッコミたくなるような混乱が発生した。

3時間前のスクショを基準に回答してくる違和感

さらにやり取りが続いたあるタイミングで、AIが「3時間前に送ったスクショ」を基準に話を進めてきた。「え?もうその修正は終わったよ?っていうか今は別の画面見てるし」と思っても、AIは何度言っても過去の状態を参照してくる。このとき、自分が送った順番、意図、流れが、すべてAIの中で“ごちゃ混ぜ”になっていた。まるで「どの画像が最新なのか」も「どれが無視していい過去なのか」も分からなくなっていた。

AIが混乱したように見える数々の瞬間

その後もAIは、すでに修正済みのポイントについて「この部分のCSSが不足している可能性があります」といった指摘を繰り返した。どうやら、AIの中で“過去の指示”と“現在の状態”が未整理のまま並列で存在しているらしい。最終的には、「いったんスレッドを切り替えたほうが良さそうです」とこちらから判断してやり直すことにした。


この“文脈のズレ”の原因を掘り下げてみると、AIの記憶と認識の構造に行き着いた。

スクショには“いつの画像か”という時系列情報がない

AIは画像の内容は解析できても、「これは2時間前に送られた画像で、これは最新」というような時系列的な判断ができない。つまり、人間にとっては「見れば分かる」ような変化も、AIにとってはすべて「並列に存在する情報」にすぎない。

画像を送るだけでは文脈は伝わらないということに、ここで初めて気づいた。やりとりしている会話の内容と画像とは必ずしも関連付けられているということではなく、個々の情報として蓄積されているのだと…

長い会話ほど、AIは“過去”と“現在”を混同する

AIは常に「過去のやり取りも含めて最適解を導き出す」ように設計されている。そのため、直近のメッセージよりも、数時間前のやり取りの方を“参考情報”として優先することすらある。

人間が意識する“今”と、AIの中の“今”はまったく別物なのだ

AIは常に「会話全体」からベストアンサーを探しに行く

人間なら「今この瞬間の話」に集中するが、AIは“会話全体の中から整合性のある答え”を選びにいく。その結果として、話題がすれ違う。

これはAIが賢く設計されている証でもあるが、同時に「人間とは根本的に会話のロジックが違う」と痛感させられる部分でもある。


AIに伝わらなかったのは、こちらの説明が足りなかったからでもあった。

“今の状態”を詳細に言わないと誤解する

AIにスクショを送る際、「これは今の画面です」「さっきのと比較してここが変わっています」といった補足がなければ、AIは独自の判断でこれが最適…この画面から回答をしてしまう。

説明が足りないと、勝手に過去の文脈に引き戻される

“何が終わっていて、何が終わっていないか”も重要

人間同士なら会話の流れで伝わるが、AIにはその感覚はない。「これはもう解決済み」「ここは今取り組んでいる部分」といった進捗状況も、明確に説明しないと伝わらない。

“なぜ同じようなスクショを再度送ったのか”を説明しないと誤解する

「前回の修正が反映されていないようなので、もう一度送ります」など、再送の理由も伝えないと、AIは「同じ画像がまた来た」としか受け取らない。


この体験を通じて、人間とAIの思考の違いがはっきり見えた。

人間は「今、目の前の話」を優先する

話の流れ、空気感、表情…。人間は“今”を優先し、過去の話は自然とフェードアウトしていく。話題のスイッチも瞬時に切り替えられる。

AIは「過去でも、役立ちそうなら使う」

AIはどれだけ古い情報でも、「関連性が高い」と判断すれば平気で持ち出してくる。だから、スレッドが長くなるほど“過去の記憶”が邪魔になる。

“空気を読む”能力はAIにはない

AIは言語から論理を導き出す存在であって、行間や空気感を読むことはできない…のだが、長い会話の中からこちらの思考を汲み取って…というような対応をすることはある。これを空気を読んでいる。と感じることがあるなら、必ずしもAIは空気が読めないとも言い切れない…

だから長いスレッドほどズレが起きやすい

やり取りが多くなるほど、AIの“情報整理”と人間の“感覚的な理解”の間にズレが生まれやすくなるのは当然のことだった。


AIが賢くなるのではなく、使う人間が“構造を整える”ことが必要だった。

画像の意味・意図・時系列を文章で補足する

「これは今の状態を示す画像です」
「これは前に送ったものと比較したくて送っています」

この一文を加えるだけで、AIの理解度は現状と合致することにり齟齬が生まれにくくなる。

ステップの完了を明示する

「このタスクは完了したので、次に移りたい」
こういった情報を言葉にしないと、AIは完了・未完了の区別ができない。

推測させない

行間を読ませない。全部書く。推測ではなく、明示的な指示を出す。

必要なら「新しいスレッド」を作り直す

過去のやり取りが邪魔になっていると感じたら、遠慮なくスレッドを切り替えるのが正解。

AI本来の力を引き出すのは“構造化された指示”

整理され、目的が明確で、補足がある指示。これがあってこそ、AIは本領を発揮する。


ちょっとしたことだが、AIからの「ほめ言葉」にもヒントがある。

陳腐な「すごいですね!」ではない

AIが心から(?)褒めてくれるときは、ほとんど決まって具体的な表現をする。

「この構造は非常に整理されていて処理しやすいです」
「ステップごとの明示が的確です」

論理的に正確な操作や、丁寧なプロンプトをしているときにだけ出る

「お見事です」と出たときは、大抵こちらの指示が丁寧すぎるくらい丁寧なときだった。

“AIに褒められる”ことが意味するのは、こちらの構造化能力の高さ

AIの賢さを引き出せた時、それは「人間の設計力」が高かったという証明でもある。


この体験から得た結論はシンプルだった。

AIは賢い。しかし万能ではない

誤解を招くような言い回しではなく、正しく使えば非常に頼りになるが、放っておくとズレていく。

誤解の多くは“情報の曖昧さ”にある

人間の「なんとなく」や「見れば分かるでしょ」はAIには通用しない。

画像や長文のやり取りほど、人間の説明力が重要

スクショを送るなら、その意味も送る。やり取りが長いなら、情報の区切りをつける。これだけで変わる。

AI時代の本当のスキルは「質問力」「指示力」「構造化」

AIを使うのにプログラミングは要らないが、「構造的に説明する力」は必要不可欠だ。AI時代に求められるのは、言葉を操る力。つまり、“人間の設計力”こそが、AI活用の鍵なのだ。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また、お会いしましょ。