納得してるのはお前だけだ!部下が動かない理由はそこにある

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中小企業の経営者や管理職にとって「部下が思った通りに動かない」という悩みはよく耳にする。だが、それは本当に部下側の問題なのか?経営者自身の“納得”にばかり重きを置き、部下を“納得”させる視点を欠いた指示が、組織の生産性を下げている根本的な原因なのではないか。本稿では、マネジメントにおける“納得”の本質と、部下の自主性を引き出すために管理職が取るべき行動指針を深掘りする。

人を動かすための根源的なメカニズムは「納得」させることだろう。指示の背景にある意味や目的を共有せず、命令的に指示を出しても高品質な成果は期待できない。そもそも、人は自分が思うほど言ったことを理解しないし、伝わらないものであることを前提として接するべきだ。言ったから解るだろう…何度も言ったよな。丁寧に言ったつもり…それは結果的に自分が納得しているだけで、部下は表面的に自分が理解できる範囲でその指示を捉えているにすぎないのだ。

指示に従う=理解、だが動かすには“納得”が不可欠

ただ「理解した」だけでは人は本気で動かない。特に中小企業では限られたリソースを最大限に活用し、全員が高いモチベーションで行動することが不可欠であり、そうしなければ競争に勝つことはできない。にもかかわらず、「やれと言ったからやれ」「指示だからやれ」という一方的なスタンスでは、部下の心が離れ、業務は表面的な実行にとどまってしまう。俗に言う…「言われたからやっとこか…」というやつだ。

納得して行動するとは「行動することで自分に得がある」と実感することだ。これは単に金銭的な報酬だけではなく、信頼、成長、承認といった内的な価値も含まれる。だからこそ、上司は部下に行動の意味を語る努力をすべきだ。直接的に言う必要はないだろうが、「これをやったらお前が得するぞ!」そう認識してもらうことで納得したということになる。

自分が納得しているだけの“上司指示”の危険性

「なぜやらないんだ?」「何度言ってもわからない」と不満を漏らす上司ほど、自分が納得していることを基準に指示を出している傾向が強い。立場の上下を理由に曖昧な説明で押し通しても、部下が本質的に理解し納得することはない。これでは、組織の力を引き出すどころか、潜在能力すら殺してしまう。

指示に従わないのは“反抗”ではなく、“納得していない”からという視点に立つことで、マネジメントの質は飛躍的に向上する。つまり、部下を動かす責任は上司にあるという認識が必要だ。

模範としての上司の姿勢が信頼を生む

「この人の言うことなら聞いてみよう」と思われるのは、役職ではなく、その人の普段の振る舞いに対する信頼感から生まれる。納得とは論理だけで成立するものではなく、信頼や尊敬といった感情が基盤にあることを忘れてはいけない。自分も若い時はそうだったのではないか…役職者=人格者・尊敬できる人 ではなかったはずだ。役職など関係なく、人の為…気遣い…約束を守る…など、このような模範的な行動が自分にプラスの影響を与えてもらい、「勉強になる人だ…」との想いが尊敬や信頼へと繋がったはずだ。

つまり、部下に納得してもらいたければ、まず上司自身が部下に信頼されるような行動を日頃から積み重ねる必要があるのだ。指示が伝わらないのは、相手の問題ではなく、自分の行動の結果と捉えるべきである。

営業活動においても、報連相においても、重要なのは“自分が納得すること”ではない。相手に納得してもらうことこそが、信頼と行動を引き出す鍵となる。

「いい説明をした」ではなく「行動を引き出せたか」を指標に

営業職でもよくあるのが、「今日はいい提案ができた」「相手も興味を示してくれた」という自己満足。しかし、どれだけ自分が納得しても、相手が納得し、具体的な行動へと移していただけなければ意味がない。

つまり、目指すべきは「説明の質」ではなく「相手の行動」である。どれだけ気持ちよくプレゼンできても、注文書が出なければ成果ではない。これはマネジメントでも全く同じである。

メールの返信一つにも“納得”の姿勢を

たとえば、メールのやりとり一つを取っても同じことが言える。自分が内容を理解しただけで返信をしないのは、自分だけが納得して終わっている状態である。相手からすれば「伝わったのか不安」「行動してくれるのか不明」となる。

「承知しました」「ありがとうございます」など、短くても返信することで、相手に安心を与え、信頼関係が構築される。これは小さな行為だが、大きな信頼を積み上げる第一歩となる。

小さな信頼の積み重ねが“任される人材”を生む

日頃の小さな行動で相手を納得させる努力をする人は、いざというときにも「この人なら任せたい」と思われる。これは営業だけでなく、マネジメントにおいても同様だ。指示を出すだけでなく、信頼を築くための言動が、組織の成果を左右する。

「俺を納得させろ!」というスタンスは、組織の一体感を削ぎ、チームの生産性を著しく低下させる。逆に、上司が模範的な行動を示し、部下を納得させることで、組織全体が前向きに動き出す。

指示の仕方で部下の行動は変わる

同じ指示内容であっても、納得して出された指示と、押しつけられた命令では、部下の反応がまるで違う。信頼と納得を基盤としたマネジメントは、上司にとっても余計なストレスを減らし、部下の能力を最大限に引き出すことになるだろう。

経営者・管理職は“人を動かす責任”を意識せよ

組織の成果は、部下の責任ではなく、上司のマネジメント能力に大きく依存する。特に中小企業では、一人ひとりの動きが業績に直結するため、“人を動かす”技術が極めて重要だ。

「言うことを聞かせる」のではなく「納得させて動いてもらう」という発想の転換が、これからのリーダーに求められるマインドセットである。

自分の“振る舞い”こそ、最大の指導ツール

マネジメントにおける最大の武器は、スキルでも知識でもなく、自分自身の振る舞いそのものである。部下は言葉ではなく、上司の“行動”を見て育つ。率先垂範の姿勢こそが、最も強力なリーダーシップとなるのだ。

中小企業のような少数精鋭の組織において、部下を“納得”させて動かす力は何よりも重要である。理解させるのではなく、納得を引き出す。自己満足ではなく、相手の反応を軸に考える。この考え方をマネジメントの中核に据えることで、部下の行動は変わり、組織の成果も劇的に向上する。

上司自身が“納得される存在”として模範的な行動を取り続けること。これこそが、部下の自発的な行動を引き出し、信頼と成果を両立させる最強のマネジメント手法である。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
また、お会いしましょ。