部下の成長を阻害する上司の勘違い – 真の成長とは何か?

Management

「成長」という言葉は、企業のフィードバック面談や評価の場面で頻繁に登場する。多くの上司が「部下にはもっと成長してほしい」と言い、部下も「成長したい」と考えている。しかし、成長とは一体何なのか?この問いに対する共通認識がなければ、成長を促すどころか、逆に阻害する結果になりかねない。

特に中小企業の管理職や経営者は、成長を「部下が主体的に動くこと」と考えがちだが、本当にそうだろうか?部下が成長できるかどうかは、環境と機会を与える上司の責任にかかっているのではないか。成長を「部下の努力次第」と捉える上司ほど、部下の成長を阻害しているケースが多いのだ。本稿では、部下の成長を妨げる典型的な上司の誤解を解説し、真に成長を促進するための具体策を提示する。

成長を促進すると言いながら、実際には阻害している管理職が多い。その最大の原因は、「成長とは部下が自発的に行動すること」と考えている点にある。

成長=自発的な行動という誤った前提

多くの上司が、部下に「もっと積極的に動いてほしい」「自分の判断で物事を進められるようになれ」と求める。しかし、現実には、部下は与えられた業務の中でしか動けず、意思決定の権限もない。つまり、上司が権限を移譲しない限り、部下はどれだけ努力しても「自分で決めて動く」ことができないのだ。

例えば、新しい業務を任せる際に、「これはお前に任せる」と明確に伝えれば、部下は責任を持って取り組むことができる。しかし、「自分で考えて動け」とだけ言われても、何をどこまでやっていいのかわからず、結果的に消極的な姿勢になってしまう。それどころか、任せると言っておきながら「言った通りにやれ。」「ちゃんと報告しろ。」など、自分がコントロールしないと気が済まないのか…まったく、任せているとは言えない状態で任せたつもりになっている上司もいる。

「だったら最初から任せるとか言うなよ。」って、なるのが部下の心理だ。そうやって新しい業務からあえて距離を取って面倒なことに巻き込まれないように…と考えてしまう部下が増殖してしまうことになる。

具体的な実行策
  1. 業務範囲の明確化:部下がどこまで自分で判断していいのかを明示し、責任の範囲を設定する。
  2. 権限移譲のステップ化:最初は小さな業務から段階的に裁量を広げていく。
  3. 試行錯誤を許容する環境づくり:間違えてもいいからやってみる、という文化を醸成する。

PDCAサイクルね…はいはい。と、思う方もいるだろう。そんなことは聞き飽きたし、なんかすごい実行策でもないだろう…と。だが、世の中のフレームワークや運用方法はこれが絶対とか、突出して効果的というものはない。重要なことは、その実行策を本当にしっかりと実行するかどうか…つまり、できるかどうかでなく、やるかやらないか。それが結果に大きな違いを生み出すことになる。やらなければ、どんな良策でもないのと同じことになってしまう。

上司が考える成長:自発的な行動力の向上

上司は「成長=自分の判断で率先して物事を進められること」と捉えがちである。しかし、部下の視点では、それはただの「丸投げ」に映ることがある。成長させたいと言いながら、結局、自分でやれよ!と言われているようにも感じることもある。

具体的な実行策
  1. 業務の優先順位を明確にする:どの仕事に注力すべきかを示し、自分で考える余地を与える。
  2. 定期的な振り返りミーティング:部下の取り組みを確認し、成長の進捗を共有する。
  3. 小さな成功体験を積ませる:成功体験が成長のモチベーションになるため、まずは小さな成果を生み出させる。

部下が考える成長:スキルや業務範囲の拡大

一方で、部下の多くは「スキルが向上すること」や「業務の幅が広がること」を成長と捉える。これは仕事の幅や質の向上には欠かせないので、成長には繋がるのだが、スキルアップだけが成長ということにはならない。この視点を理解し、適切なサポートを提供することが必要だ。

具体的な実行策
  1. スキルマップの作成:必要なスキルを可視化し、成長の指針を明確にする。
  2. 業務ローテーションの導入:異なる業務に携わることで、新しいスキルを身につける機会を増やす。
  3. 学習支援の提供:社内研修や外部セミナーなど、スキルアップのための環境を整える。

権限移譲こそが成長の鍵

成長とは、部下が自ら判断し、仕事の範囲を広げられるようになることを意味する。これを実現するためには、上司が「仕事を任せる」ことが不可欠だ。

具体的な実行策
  1. 「指示」ではなく「質問」で導く:「どうしたらいいと思う?」と問いかけ、考えさせる習慣をつける。
  2. 権限委譲のロードマップ作成:短期・中期・長期で任せる業務の範囲を設定する。
  3. 任せた業務のフォローアップを徹底する:進捗を確認し、適切なアドバイスを行う。

「部下が成長しない」のは、部下の責任ではなく、上司の責任である。成長とは、自分で判断してできる仕事の範囲・量・件数・人…等々を広げること。そのためには、上司が明確な役割分担を定め、権限を移譲し、失敗を許容する環境を整えることが不可欠である。

上司自身が「成長とは何か?」を問い直し、適切なマネジメントを実践することで、初めて部下の成長は実現する。部下の成長は、上司が育成に本気で取り組むかどうかにかかっているのだ。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
また、お会いしましょ。