DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの話題が日々飛び交う中、特に中小企業の経営者にとっては「自分には関係ない」「話題にはなっているがよくわからんし…」と感じている人が多くいるのではないか。しかし、実際にはこれらの技術を知らないことが大きなリスクになり得る。
情報が氾濫する中で、自分に合った正確な情報に辿り着けなかったり、情報をキャッチするパスを持ち合わせていない、メールなど案内はくるがそれを見ている暇もないなど、放置していると結果として非効率なことをずっと続けてしまう…という無駄(もったいない)なことをやってしまうかもしれないのだ。信頼できる専門家を顧問または相談相手として側に置いて正確で的確な情報を入手することが、IT投資を成功に導く鍵となる。知らないままでいるリスクを理解し、適切なサポートを得ることの重要性を解説する。
DXやAIを「知らない」ことが引き起こすリスク
多くの中小企業経営者は、「DX」や「AI」という言葉は耳にしていても、その本質(具体的な導入手法・得られる効果など)を理解していないことが多い。さらに、情報が氾濫しすぎて、何をどう取り組めば良いのか分からないまま日々の業務に追われている。しかし、この「知らない」ことが、実は大きなリスクを内包している。筆者の感覚からすると「知らない」のは非常にもったいないことだと思うのだ。

DXやAIに触れたことがある気になっているだけ
AIツールを一度使ってみたことがあっても、ほとんどの経営者はその本来の機能を十分に理解せずに「使ったつもり」になってしまう。例えば、AIサービスの画面を見て「何かお手伝いできることはありますか」の問いに対して、何か入力し回答を得てもそれが検索エンジンと何が違うのか?これのどこか優れているのか?…AIを使って自動化を試みたが、何が便利なのかが分からず、その後放置されるケースが多い。これでは、せっかくの技術を十分に活用できておらず、時間とリソースの無駄になってしまう。
知らないことを放置することのリスク
「知らないままでも何とかなる」と考える経営者は多いだろう。確かに知らなくても今すぐ何か危機的な状況に陥るわけでもないし、売上が低迷する直接的な要因にもなり得ない。しかし、実際にはこれが大きなリスクになり得る可能性は否定できない。
セキュリティ対策でも同様の状態になっていると思われるが、サイバー攻撃の脅威は増大しており、ITの進化についていけなければ、いつか企業活動そのものが脅かされる可能性がある。知らないことで生じるリスクは、単なる技術的な問題にとどまらず、ビジネス全体に影響を与えるのだ。
どういう影響なのか?…それは「知らない」のなら適切な経営判断ができなくなるからだ。知らないが故に無駄なIT投資をしている中小企業はよくある。AIについても同様に、気が付けば周回遅れのITを使っている…という状態になっているかもしれない。
情報は溢れているが、質の高い情報にアクセスできない現実
ITの世界には膨大な情報が溢れている。しかし、それらの情報は多くの場合、ベンダーの売り込みが主目的であり、経営者が本当に知りたい「自分に適した解決策」や「中小企業向けの実践的なアプローチ」には触れていない。これでは、どれだけ情報にアクセスできても、本質的な理解には繋がらないし、自社にとって何が有益かも判断できなくなってしまう。
ベンダー主導の情報と中小企業の現実のギャップ
ITベンダーが提供する情報は、自社製品の導入(売り込み)を前提としたものであり、技術的には素晴らしく見えても、実際の中小企業の状況に適合するとは限らない。中小企業の多くは、ITの専門知識も少なく、運用する人員も不足している。それにもかかわらず「製品を買えば問題は解決する」というメッセージが前面に出てくるため、経営者は導入後の運用面で苦労することになる。

本来、ITのプロとしてベンダー側に所属しているのであれば「プロの見解」を述べるべきである。コストをかけずとも効果的な対策があり、それがいかに有効かを説明し、それをやっておかないと優れた製品を導入しても無駄になってしまうことを理解させるのがプロとしての責務だろう。中小企業でまずやっておくべきセキュリティ対策については以下の記事を参照いただきたい。
質の高い情報にアクセスできないことが知識の壁になる
情報は常に手に入る状態にあるが、経営者が理解できる「質の高い情報」にアクセスするのは非常に難しい。経営者自身が自ら勉強する時間もなく、わざわざ本を買ってまで学ぶ気にはならない現実もある。そのため、表面的な知識で判断することになり、結果的に適切な対策を講じられないケースが多く見られる。
最近は「AI検索」という手法が出てきており、従来の「ググってみる」とは別の検索結果が表示される。自然言語で人間に頼むように、知りたいことを入力するとAIが情報を整理して提供してくれる。学習済みのものしかアウトプットしないという仕様ではないため最新の情報を入手できる。以前にAIを使って、検索エンジンとの違いが、よくわからなかった…という方は是非、一度やってみていただきたい。これは、なかなか使えるなぁ…おそらくそのような感想を持っていただけるのではないかと思う。

DXやAI導入を成功させるための「顧問」の重要性
中小企業がDXやAIを活用する際に最も重要なのは、製品を選ぶ前に、信頼できる専門家を側近として迎えることだ。経営者一人で判断を下すのは危険であり、専門家のアドバイスを基に適切な戦略を立てることが成功への鍵となる。本ブログでは、自社内で全て判断してやろうとせずに、専門家の助言を求めることは結果として無駄なIT投資を防ぐことになると解説しているので重複するが、大事なことなので伝えたい。
IT顧問の役割
IT顧問は、経営者に寄り添い、企業の状況を深く理解した上で最適なアドバイスを提供する存在だ。単なる製品の導入を勧めるのではなく、企業の長期的な成長を見据えた提案を行う。例えば、AIの導入に際しても、どんなツールがあるか情報収集して選定するような方向で検討するのではなく、まずは経営者や従業員のリテラシー向上を図り、その後に実際の業務フローにどのように活用できるかを検討する必要がある。
要は、ツールを使いこなすITリテラシーや環境が整っていなければ効果は発揮されないということだ。AIが人の行動を促したり、何かを決めて実行することはない。人間の適切な指示(プロンプト)がなければ、ただ存在するだけである。
専門家の助言で適切なIT投資を実現
AIやDXに関する正確な知識を持った顧問がいれば、ITベンダーの「ご提案」と称する、一方的な売り込みに惑わされることなく、適切な製品やソリューションを選定することができるだろう。顧問を通じて、企業の実情に合ったIT投資を計画し、導入後の運用面でのサポートも受けることで、無駄なコストを削減しつつ効率的なDX推進が可能となる。
本当に今、その製品が必要なのか?あったら良い。あれば便利。それが、いつの間にか必須のものだと誤認することになり導入してしまうこともなくなるだろう。専門家の助言があれば、トゥーマッチな製品、保有しているツールでできるのに同様のものを導入(重複導入)するなど、無駄と無意味を解消することができる。筆者が見てきた経験から「特定のベンダーにお任せしている」という企業はこの傾向が見られる。
専門家をIT関連の情報源にする
製品やサービスの販売をしない顧問のような存在が側にいると、その人からIT関連の旬な情報を入手するようにしたら良いだろう。会社のことも知っているので余計な情報をもたらすこともない。2週間に1時間程度のIT情報交換ミーティングのような場を設けて、昨今のIT事情やAIの具体的な利用方法などを少しづつでいいので、知識を積み重ね、自分もやってみることで的確な経営判断を下すことができるようになるだろう。
筆者もクライアント企業の経営者とITの利活用やAIについて助言をする定期ミーティングを実施しているが、AIについては、具体的な使い方や筆者が実践している方法、参考になる動画など紹介することで、それを休日に実践すると「あのAIを使って、ものすごく短時間でできるようになりました」とすぐにその効果を体感し、具体的に活用できそうな業務を整理し始めたということもあるのだ。
知らないことは従業員にとってもリスク
経営者がDXやAIの本質を理解していない状態を放置することは、従業員にも悪影響を及ぼす。適切なIT投資が行われず、業務が非効率なままでは、従業員の生産性や士気に影響することにもなるだろう。逆に、経営者が信頼できる顧問と連携し、効率的なIT運用を実現すれば、従業員の業務環境も大きく改善され、結果として会社全体の生産性向上に繋がる。
従業員にとっての負担を軽減するDX
適切にDXを進めることで、手作業の削減や業務の効率化が実現し、従業員の負担を軽減できる。また、AIを活用した自動化や分析により、従業員がよりクリエイティブな業務に専念できる環境が整う。これは、中小企業にありがちな「属人化」の解消にもなる。ベテラン社員が経験と工夫の積み重ねで構築した業務フローが、第三者からすると煩雑でミスを起こしやすいものに見えるのだが、ベテラン社員はこのやり方に慣れているため変える気はない…あまり口出しもできずに…ということはあるだろう。

これを解消するには、ベテラン社員を説得するなどの手法ではなくデジタル化など根本的な業務フロー改善という大枠から変えていく必要があり、これが結果として属人化の解消になる。そのような進め方がスムーズな業務改善となり、企業の成長と従業員の成長が同時に実現できる。
まとめ:経営者はまず信頼できる専門家を見つけることが重要
中小企業にとって、DXやAIはもはや避けて通れない重要な課題である。しかし、知識がないままでは、IT投資の成功は難しい。まずは、信頼できるIT顧問を見つけ、経営者自身が正確な情報を得て判断できる環境を整えることが不可欠だ。「知らない」ことをリスクと捉え、積極的に学ぶ姿勢を持つことが、将来的な企業の成長に繋がる。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
また、お会いしましょ。